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256倍オーバーサンプリング ディスクリートDACを作りたい(3)

今回は、ディスクリートDACの本命案である
10bit 3値二次δΣ
というロジックを作ってみました。

それから、10bitDAC部に対しては、高精度が期待できる
正負9bit合成 ブリッジ型 R-2R
という方式を考案してみました。



前回、PCMデータを1bitδΣ(DSD256)変換するロジックを作ってみました。
今回は、その応用編です。

1bitδΣはシンプルなロジックで高精度変換が実現できる、夢のような方式であることが分かりました。
しかしその一方で、ノイズシェーパーによって高周波にシフトされたノイズを抑えることに苦労しそうです。

また、δΣは、高次化した場合には出力を多値化しなければ、性能や安定性が犠牲になります。
この点が1bitの設計の難しい所のようです。

そうすると、多bit化したδΣを取り入れたくなります。
例えば、10bit化したδΣは、1bitδΣに対してS/Nが約60dB向上しますからね。

というわけで、10bit二次δΣをロジック実装してみました。
10bitδΣといっても、実際には
上位10bitR-2R+その下位bitを1bitδΣ変調
という構成で、ロジック自体はDSD256変換と共通です。
ただし、1bitδΣの問題(上下限付近の歪みなど)対策のため、量子化を2値(0,1)ではなく3値(-1,0,1)
で行うことにしました。

エクセルにて上記ロジックの動作確認をしてみました。
分かりやすくするために、10bitδΣではなくて4bitδΣで描画しています。
256DAC_204.gif

↓はあらためて1bitδΣの場合。
256DAC_202.gif
(上下限の歪み対策として、前回記事の状態からΣ部にリミットを入れてみました。それでも歪みは残ります。)

4bitδΣは画像では分からないレベルにノイズが低減されていますね。
また、上下限付近またbitの変わり目付近でも、3値変調によりノイズシェーピングがなされ、歪みなく波形が再現できています。


256fs動作10bitδΣという構成は、理論上は28bit相当の分解能ということになるんでしょうか。
これなら性能的にも市販DACチップに劣らないものになりそうです。
デジタルアッテネータも、ビット落ちを気にせず使えるようになりますね。

で、動作確認・・・と行きたいところですが、
手持ちの安物オシロでは、10bit付近の確認ができません。
そろそろ真面目に試作品を作らなきゃいけないかな?


さて、以上が、本命案である多bit型δΣDACのソフトの話。
ここからはハードの話です。

多bitδΣDACをディスクリートで作れば、分解能やS/Nは市販DACチップに劣らないものにできそうですが
bit線形精度(歪み)が、唯一問題として残ります。
音質的には、高性能なδΣDACチップがTHD+N 100~120dBというレベルなのに対して、
最低でも60dB(10bit相当)できれば80dB(13.5bit相当)以上が欲しいです。
(歪み60dBとか80dBというのは、聴感上の経験からくるカニの主観です。)
で、80dBをR-2Rで実現しようとすると、MSBビットの抵抗精度が0.01%以下のマッチングでないといけません。
これは大変厳しい値です。

そこで、精度のハードルを少しでも下げるために、
正負ブリッジ型の電圧出力R-2R回路なるものを考案してみました。

例えば5bitのブリッジ型R-2Rは、↓のようになります。
256DAC_203.gif
右側のbitは、正の数では2進数の1111(=10000)固定、負の数ではその値を取ります。
左側のbitは、負の数では2進数の0000固定、正の数ではその値を取ります。
これで5bitの表現が可能です。

はい、残念なことに、通常のR-2Rに対して、抵抗の本数が約2倍必要です。
しかしながら、以下のようなメリットが発生します。
・通常のR-2Rの場合、正負信号の反転時にMSBが反転するので、最も誤差とグリッジノイズが大きくなるが
 ブリッジ型R-2Rの場合、正負信号の反転時はLSBが反転するので、最も誤差とグリッジノイズが少なくなる。
 ⇒小信号再生時に歪みが少なくS/Nが良い。
・抵抗精度バラツキ等に起因するビット誤差が半減する。
 また、グリッジノイズも半減する。
 ⇒精度が2倍に向上
・例えば右側のbitと左側のbitを高周波で交互に入れ替えると、左右同一bit間の相対誤差が半減します。
 (これをやると、グリッジノイズ増大やヒス音の可能性など、デメリットも出てきそうですが)

というわけでこの回路、R-2Rの弱点をうまいこと潰してくれそうです。
現状、上記ブリッジ型で10bitを組もうかと考えていますが、
聴感上で問題無ければ、8bit程度までbit数を落としても良いかもしれません。
R-2Rは、bit数に比例して抵抗の本数が多くなるので、組むのが大変ですからね。

もう一つ、R-2Rの欠点として、
ロジックbit出力の出力インピーダンスの影響で精度が悪化する
という問題がありますが、
これにどう対応するかは二案あり、少々考えあぐねています。
実際に作って試さなきゃならないかな?

さて、以上で、最良のDACに向けての肝だと考えている技術は出そろいました。
次は試作品を作って、各方式の音質評価をしなければならないかな?
まだまだ完成には長い時間がかかります。。。


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ニアフィールドリスニングや、ポータブルオーディオにも手を染めたいんですが、いつになることやら。。。

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実在感のある音
を目指して、
ゆっくり、ゆっくり、潜航中。

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